精神に障害を起こす原因は、器質性、機能性、心因性の3つの精神病が考えられます。外傷、中毒などで脳に故障を起こし、精神に異常をきたすものを器質性精神障害といいます。心配、不安、悩みなどがこうじる精神的影響によって、こころのはたらきに故障を起こすものを心因性精神障害といいます。
脳やからだになんの物質的変化もみとめられず、精神的な原因もはっきりしない精神障害(統合失調症[精神分裂病]や躁うつ病)があります。これを機能性精神障害(内因性精神病)と呼んでいます。
精神の異常は、振る舞い、顔つき、話しかた、話の内容などにあらわれるその人の気持ちの故障から察するよりほかありません。脳に物質的な変化、または病気がある場合(意識混濁状態、記憶減退状態、知能低下状態)と、脳は物質的におかされておらず、病気もない場合とがあります。
思考の乱れ
支離滅裂になったり(統合失調症[精神分裂病])、次々に話題が変わったり(統合失調症[精神分裂病]や躁病)、逆に渋滞したり(うつ病、脳梗塞、てんかん、精神発達遅滞など)します。
離人症状
自分のからだが自分のものという感じがしなかったり、外界の状態がよく感じられない状態です。統合失調症(精神分裂病)、うつ病、または神経症にみられます。
興奮
健康な人も興奮しますが、原因がなくなるとすぐおさまります。病的な興奮では、はっきりした原因もなく興奮し、からだが落ち着かなく、多弁になります。躁病や統合失調症(精神分裂病)、心因性の興奮や、アルコール、覚醒剤による興奮、ステロイドを大量に服用したときなどの薬物による興奮もあります。
心気・不安・抑うつ状態
検査によっても病気だという証明ができない場合です。頭が重い、からだの調子がわるい、眠れない、疲れやすい、記憶力が減ったなど心身の不調をうったえる状態です。
神経症やうつ病が考えられます。神経症には心気神経症、不安神経症、恐怖神経症、強迫神経症などがあり、自律神経の失調がこうじますと、性格異常とみなされることもあります。
幻覚妄想
外界になにもないのに見える(幻視)、聞こえる(幻聴)、あるいはなんでもないものを当人だけ特別な意味があると信じ込む(妄想)、特に他人から迫害されていると誤って確信する(被害妄想、強迫観念)など、ある特別なイメージ、観念が浮かんできて、追いはらえずに苦しむ状態が多いのですが、逆にそれが愉快でたまらないという状態もあります。統合失調症(精神分裂病)にしばしばみられます。
妄想は、出現様式によって妄想気分、妄想着想、妄想知覚に分けられます。妄想気分は、周囲が不気味に感じられ、なにか大きな事件が起こりそうな不安を感じることであり、妄想着想は、突然原因や動機なしに「自分は天皇の子孫だ」などと確信することです。
妄想知覚はなにかを知覚したのちに、了解不能な意味づけをし、それを確信します。躁病や分裂病では、自己に対する過大評価を内容とする誇大妄想がみられます。また、うつ病では自己の過小評価を内容とする微小妄想がしばしば出現します。
アルコール依存症や幻覚剤などの薬物嗜癖、頭部外傷、脳動脈硬化性精神障害のため、脳のはたらきに化学的変化を起こし、幻覚妄想が生ずることがあります。
記憶減退・知能低下
経験したことを思い出せなくなる状態には健忘症や記憶力低下があります。まったくでたらめのつくり話をしたり、思い出せないことを勝手に補うのはコルサコフ精神病といいます。ノイローゼでもそういう兆候を示すことがあります。高齢者では一般に新しいことは忘れやすく、むかしのことはよく覚えていて、思い出せます。
生まれつき知能が低いのは精神発達遅滞、以前には正常だった知能がおとろえるのは痴呆といいます。知能低下に似た状態は統合失調症(精神分裂病)にもあらわれますが、アルコール中毒や脳性小児まひ、老化やアルツハイマー病でもそうなります。特に、老年痴呆では好奇心がなくなり、すぐ前のことを忘れるのが特徴です。
感情失禁
脳動脈硬化性精神障害で感情が変わりやすく、すこしのことで泣いたり、またすぐ笑ったりします。