炎症
手足、あるいは四肢の痛みは、単純な皮下組織の炎症、蜂巣炎、静脈やリンパ管の炎症、腱鞘炎
[けんしょうえん]、骨髄炎が多いものです。手足に炎症がある場合、手足の付け根のリンパ節がはれ、押さえると痛いことが多くなります。痛風は手や足指に尿酸がたまって炎症を起こし、痛みが激しい病気です。特に男性に起こりやすく、右側の第一趾の関節の発赤、腫脹、熱感などで始まることが多いものです。
外傷
打撲、捻挫、骨折、脱臼のほか、腱断裂(ことにアキレス腱の場合)のような外傷があれば痛みます。筋肉痛、突き指は、日常しばしば起こります。
骨の痛み
炎症や外傷ではなく、骨の腫瘍でも痛みます。骨にはがんの転移が起こり、ちょっとした原因で骨折もしやすくなります。慢性では、膝部脛骨
[けいこつ]前面のオスグッド・シュラッテル病でも起こります。
関節の痛み
関節の痛みが急に起こることがあります。化膿性関節炎で細菌感染によることが多く、子どもではリウマチ熱の部分的症状として発生することもあります。前者は、1つの関節をおかすことが多く、リウマチ熱では、多くの関節が同時にはれて痛み、全身の発熱が著明です。慢性の関節の痛みは慢性関節リウマチに多く、指、ひじ、ひざなどがはれて痛みます。複数の関節が痛み、朝起きたときに手がこわばるのが特徴です。変形性関節症も起こりやすく、膝関節に多発します。特に閉経後の女性では骨粗鬆症が進み、両手のいちばんさきの指関節が変形し痛みを伴います。股関節にはペルテス病があります。
神経痛
神経痛は末梢神経障害による痛みを意味します。臀部から下肢のうしろ側にかけて痛む坐骨神経痛をはじめとして、四肢には上腕神経痛のような神経痛がよく起こるものです。
神経痛は、病名として取り扱うより症状と考え、できるだけその原因をはっきりさせて、対症療法より原因療法をおこなうべきです。
原因としては、帯状疱疹(ヘルペス)というウイルス疾患、糖尿病、中毒、腫瘍や骨による圧迫、椎間板ヘルニアなどいろいろな病気があります。肺がんでは腕の神経痛が起こることもあります。また原因があきらかでない神経痛もありますが、全部を単純な神経痛として片付けないよう、医師によく診てもらってください。
血管、リンパ管の病気による痛み
手足へ行く動脈や静脈が狭くなったり、閉塞したりするため、血液が十分循環しないために起こる痛みです。
動脈が狭くなったために、血流が減少して起こる下肢の痛みは、歩行時に増強し、歩けなくなることがありますが、いったん休むと、ふたたび歩行可能となる特殊性があります。これを間歇性跛行
[かんけつせいはこう]といいます。
糖尿病、高脂血症、高血圧や喫煙者に合併してくる下肢の閉塞性下肢動脈硬化症は、近年増加しており、間歇性跛行がみられます。青壮年の男性にみられるビュルガー病は、別名閉塞性血栓性血管炎とも呼ばれ、間歇性跛行、下肢の安静時疼痛、難治性潰瘍がみられます。このほか、レイノー症候群、リンパ管炎、急性動脈塞栓症、閉塞性静脈炎でも手足が痛むことがあります。
その他の痛み
インフルエンザ、敗血症など、高熱の出る病気に伴って手足や関節が痛むことがあります。
ほかに痛みを起こすものに、足の指骨のケーラー病、うおのめ、職業病のキーパンチャー病などがあります。