腹痛は日常しばしば経験される症状で、いろいろの病気によって起こります。ここでは主として、急性に起こる腹痛について述べます。急性に腹痛を起こす病気には、軽いものから非常に重いものまで多種多様です。
腹部全体
場所がはっきりしない、あるいは移動するものを含め、腹部全体が痛む場合で、多いのが子どもの急性胃腸炎です。このときは同時に食欲がなく、吐いたり下痢したりすることが多いのですが、過食過飲によるものは別として、細菌性食中毒のときには発熱を伴い、下痢、嘔吐などの症状が激烈です。下痢が特にひどい場合は、急性腸炎を考えます。
便通がなく、ガス(おなら)も出ないようになり、腹が鳴って痛み、腹がふくれ、嘔吐が始まれば、イレウス(腸閉塞)の心配をしなければなりません。
同じような腹部全体の痛みですが、最初は左右下腹部とか上腹部の痛みで、ある時期を境に腹部全体の痛みになり、腹がはって嘔吐する、熱が出てきた場合は急性腹膜炎を考えなければなりません。
急性にこなくて鈍痛や重苦しい感じがあり、腹がふくれてはるようなときは、がん性の腹膜炎、肝硬変などにより腹水がたまった場合が考えられます。
腹部内臓損傷、腸閉塞のとき、またまれな病気ですが、腹部大動脈瘤とその破裂は、激しい腹痛とショックを伴います。鎮痛薬でがまんしたりせず、すぐ外科手術のできる病院に行ってください。
腎臓はじめ各種臓器の下垂症でも、起立時に腹部全体の痛み、あるいは臓器によっては右寄りなどの腹痛をうったえます。紫斑病や回虫症でも、腹痛発作を起こすことがあります。
脊髄の梅毒脊髄癆
[ばいどくせきずいろう]や脳梅毒でも腹痛をうったえます。単なる神経痛のこともあります。
女性の場合
卵巣嚢腫の茎捻転や子宮外妊娠破裂では、右と左、いずれかに痛みが起こります。後者のときには、貧血とショックを伴うこともあり、すぐ開腹手術を要します。婦人科の病気としては、そのほか子宮内膜症や子宮筋腫などでも下腹部が痛みます。子宮筋腫では、月経の量が多くなり、時に貧血の原因となります。