自分の意思に反しての異常な運動を不随意運動といいます。不随意運動の代表的なものは脳の病気で起こります。ほとんどの不随意運動は睡眠時に休止し興奮すると増強します。こまかい手足のふるえを振戦といい、高齢者で振戦だけをみとめるものを老人性振戦といいます。
高血圧を基礎疾患に小さな脳梗塞(ラクナ梗塞)が多数できた場合にも振戦が起こってくることがあります。パーキンソン症候群の症状は、手足の振戦に加えて手足の筋肉のはたらきがかたく、運動がにぶり、表情がなくなります。からだが前かがみとなり、精神的にもうつ状態に近づきます。発作性に血圧が下がり、意識消失が起こることもあります。肝不全や腎不全、アルコール、たばこなどの中毒でも振戦が出現することがあります。
甲状腺機能亢進症でも動悸、眼球突出に加え手足がふるえ、おちつきがなくなります。不規則な非対称性の運動であたかも踊っているような不随意運動を、舞踏病様運動といいます。おもにリウマチ熱が原因で学童期(5〜15歳)に起こってくるものとして小舞踏病があります。また中年以降で起こり痴呆を伴うものとしてハンチントン舞踏病があります。妊娠や膠原病の1つである全身性エリテマトーデスでも出現します。
ゆっくりとした、くねるような、またはねじれるような運動をアテトーゼ様運動といい、小児まひや脳血管障害や外傷でみられたりします。ピクピクする筋肉の収縮がミオクローヌスで、小児では亜急性硬化性全脳炎、成人ではヘルペス脳炎、高齢者ではクロイツフェルト・ヤコブ病があります。その他、薬物中毒、肝障害、腎不全、多発性硬化症など多くの病気で起こってきます。