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第2期(娩出期)

 経過

 第2期は、子宮の出口が完全に開いてから赤ちゃんが生まれるまでの期間で、はじめての場合には2〜4時間、2回目以後は1〜2時間です。
 正常なお産では赤ちゃんは頭からさきに出てきますが、頭の部分でも後頭部がいちばん細いので、産婦のおなかの中であごを引いて胸にあごをつけた状態で後頭部をさきにして下りてきます。

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 産道と児頭の回旋

 お産のときに赤ちゃんが通る道を“産道”と呼びます。内側は子宮の下の部分、頸管[けいかん]と腟[ちつ]、外陰部[がいいんぶ]の一部がこれにあたります。
 いずれもやわらかいので十分に広がりますが、その外側は骨盤の骨で包まれているために、赤ちゃんの頭は骨盤の内側のかたちにあわせて出てこなければなりません。この骨を“骨産道[こつさんどう]”と呼びます。これは途中で曲がっており、また入り口は左右の横幅が広く、出口は前後の縦が長くなっています。
 一方で赤ちゃんの頭も、上から見るとまんまるい球形ではなく前後に長い楕円形[だえんけい]をしています。
 したがって赤ちゃんの頭は骨盤の入り口ではそのかたちにあわせて横を向いており、産道を通る途中で向きを変えて、さらに外へ出るときには縦になって出てきます。これを“児頭の回旋”と呼んでいます。第2期の間に横向きから縦向きへと変わることが多いのです。




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 いきみ(腹圧)

 第2期に赤ちゃんの頭が産道を通り抜けて外へ出るためには、子宮の収縮だけでは不十分で、陣痛にあわせて産婦が十分にいきむ必要があります。いきむことを医学的には「腹圧をかける」といいます。
 いきみの時期は、正常なお産の場合には、赤ちゃんの頭が直腸を圧迫するために、排便のときと同じような反射で自然にいきみたくなりますから、自分でもわかります。なかには排便したいという人がありますが、これは赤ちゃんの頭のせいで、便ではありません。「いきみなさい」という信号だと考えてください。
 ただし、陣痛があまり強くない場合には、子宮の収縮と、うまくタイミングをあわせていきむ必要があり、助産師や医師が教えてくれます。いきむと便や尿が出ることもありますが、これは当然のことで恥ずかしがったり気にすることはありません。

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 分娩室で

 第2期の後半、あと1〜2時間で生まれることが予想される時期に、陣痛室から分娩室に移されます。
 分娩室では外陰部を消毒したり、カテーテルという細いゴムの管で尿をとり、消毒した布を腰の下や両足にかけて、お産の準備をととのえ、さまざまな器具なども準備します。
 分娩室に入ってからは、分娩台という特殊なベッドの上でいきむわけですが、ふつうは仰向けでひざを立て、足の裏を台につけるか足台の上にのせます。背中が浮くと力が入らないので、背中を台にぴったりつけ、あごを引いていきみます。腕は分娩台の頭のほうに伸ばして手すりにつかまったり、両足のわきにとりつけた取っ手か革のひもについたにぎりをつかんでいきみます。
 施設によって座った格好をとる分娩台もあります。むかしは坐産がふつうだったので、この姿勢のほうが自然でいきみやすいといわれます。
 赤ちゃんの頭は陣痛および産婦のいきみとともにしだいに下がってきて、やがて陣痛のたびに外から見えるようになります。これを“排臨[はいりん]”と呼びます。さらに進むと陣痛がなくとも頭が見えるようになり、それが“発露[はつろ]”です。

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 会陰切開

 赤ちゃんの頭がいよいよ腟から外へ出るときになると、会陰部[えいんぶ]が強く引き伸ばされます。この会陰部は、肛門括約筋[こうもんかつやくきん]という丈夫な筋肉が内部にあり、特にはじめてのお産ではかたくてなかなか組織が伸びない部分です。腟の出口の直径は赤ちゃんの頭よりやや狭いので、最終的には出口の周囲のどこか一部が切れるか裂けるかして赤ちゃんが生まれます。
 むかしは赤ちゃんの頭が会陰部のあたりまで下りてきてから、できるだけ時間をかけて組織が引き伸ばされるのを待って、産ませたのですが、この位置にくると、赤ちゃんの頭は下の丈夫な筋肉と上から加わる強い子宮の収縮力の間で圧迫を受けるので、長い間放置しておくのは赤ちゃんにとって害があることがわかりました。現在でも切らないで産ませるほうがよいと主張している助産師がありますが、これは誤りです。
 したがって、会陰部の伸びがわるい場合には医師がはさみで少し切開します。自然に切れたり裂けた傷よりも縫いやすく、治りやすいので心配はありません。
 切開したあとは絹糸か自然に吸収される糸で縫います。局所麻酔をしますから、そんなに痛くはありません。



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 補助動作

いきみ
 分娩の第2期に、陣痛にあわせて腹圧をかけるのは産婦の大切な役目です。陣痛がいくら強くとも、いきみかたが下手だとお産がなかなか進みません。
 仰向けに寝てあごを胸のほうに引きつけ、背中は台につけ、息を十分に吸い込んでとめ、排便のときと同じ要領で肛門のほうへしっかりいきみます。
 実際のお産では、陣痛が始まってもすぐにはいきまず、2〜3回大きく深呼吸をくり返し最後に大きく吸い込んでから息をとめていきみます。いきむ途中で声を出したり、口から息を漏らすと力が抜けてしまいますから、なるべく長く続けます。

短促呼吸
 赤ちゃんの頭が出てくる瞬間には、いきみをとめてからだ中の力を抜き、“短促呼吸[たんそくこきゅう]”に移ります。
 この呼吸法は、それまでなにかをつかんでいきんでいた両手を離して胸の上に置くか、手を組み合わせてハッ、ハッ、ハッ、ハッと小きざみに息を吸ったり吐いたりします。暑いときに犬が舌を出して呼吸するのを思い出してください。
 この動作の目的は、赤ちゃんの頭があまり急にバッと飛び出して、会陰部の傷が大きくなるのを防ぐために助産師がゆっくり産ませるためで、時期は、医師や助産師が「いきむのをやめて、ハッ、ハッ、ハッしなさい」と教えてくれます。

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 娩出

 赤ちゃんのからだは頭がいちばん大きく、その次は肩幅で、胸から下は細いので頭が出たあとは一息で全身が娩出されます。助産師が顔を拭いてから左右の肩を外に出し、わきの下に手を入れて軽く引くと全身が出ます。鼻や口のなかの粘液、羊水、血液などを細い管で吸い出すと、元気なうぶ声をあげて泣き出します。



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