ツイート

HOME>妊娠・出産>妊娠>妊娠中の生活の心得

妊娠中の生活の心得

 妊娠中の生活の基本は規則正しく、自然で無理のない生活をすることです。
 妊娠しますと全身の血液量が増加したり、胎児が大きくなるにつれて心臓や腎臓、肝臓などにある程度の負担がかかりますが、多くの女性はこのような負担に対する予備能力がありますので、健康な女性は正常分娩となる可能性が高いのです。
 最近は妊娠に関する情報過多の時代となり、正常の妊婦さんが多くの異常妊娠の知識をもっていたり、逆に妊娠によるからだの変化にまったく無関心な妊婦さんがいたりします。
 妊娠に関する基本的知識はある程度必要ですので、妊娠したら病院や保健所の母親学級、両親学級などに参加することをおすすめします。これらの知識で一般的には十分です。
 異常が起きたときは医師に相談し、生活上に必要な適切なアドバイスを受け、それを確実に実行すればよいのです。

▲ページのTOPへ

 現代の胎教

 胎教とは母親が胎児をいとおしいと思い、やさしい気持ちで語りかけることが基本です。胎教を胎児期の教育と考えて、妊娠中に英語や数学を勉強すれば頭脳優秀な子どもが生まれると思うのは根拠のないことです。
 胎児は妊娠中期から聴覚、味覚、視覚、記憶力などがあることが知られています。ですから外界の音の刺激に胎児は反応しますし、母親の声や子宮内の音は聞き、記憶しています。この現象を応用して子宮内の状態に近い音を赤ちゃんに聞かせるおもちゃがありますが、この音を聞くと赤ちゃんが安心して寝つきやすいことがわかっています。
 しかし母親が楽しい音楽を聞いてリラックスしたり、夫婦の豊かな会話によって満足した気持ちになることによって血管もリラックスして子宮への血流が十分にいきとどくことが、胎児の正常な発育にもっとも必要なことなのです。
 妊娠中には豊かなこころをもって生活をすることが胎教につながるのです。

▲ページのTOPへ

 規則正しい生活をする

 健康で快適な生活を送るためには、規則正しい生活によって、正しいリズムを保つことがもっとも大切です。人間のからだのなかには“生物時計”というものがあって、消化器も脳神経も、その他あらゆる内臓は一定のバイオリズムではたらいています。
 規則正しい生活によって、このバイオリズムが一定に保たれるために内臓のはたらきなども効率がよくなり健康を保つことができます。不規則な生活をしていると、生物時計の調子が狂って疲れがたまったり胃腸が弱ったりします。食事の時間や睡眠時間もなるべく一定にします。夫の帰宅が遅れるようなときには、さきに食事をすませるようにします。1日中、家でひとりになるようなときも予定をたてて規則正しく過ごすようにしたいものです。

▲ページのTOPへ

 十分な睡眠と休息をとる

 睡眠はふだんより1時間多く、少なくとも8時間以上とるようにしてください。昼寝も非常に効果があります。
 30分から1時間、たとえ眠れなくとも横になっているだけで、肝臓や腎臓を流れる血液の量が増加しますから、これらの臓器を十分に休ませることになります。その際に、座ぶとんやクッションを利用して、足のほうを高くして休むと血液の流れはさらによくなります。
 妊娠末期になると、おなかが大きくて苦しく寝つきがわるくなったり、夜中になんべんも目をさますようになります。睡眠薬などに頼らずに、ふとんやクッションをたくさん使って寝やすい姿勢を工夫します。昼間、散歩など適当な運動をすることが夜の安眠につながります。

▲ページのTOPへ

 家事

 家事はふだんと同じように続けてかまいませんが、無理な姿勢や動作をしたり、長時間同じ姿勢で立っているようなことは避けるようにします。食事のしたくなども、腰かけてできることは椅子にかけて、別の椅子に足をのせてするとよいでしょう。
 前かがみや中腰、しゃがんだ姿勢は妊娠の末期には非常に疲れますからなるべく避けます。最近は掃除のためにいろいろ便利な道具ができましたから、それを上手に利用して床の上にしゃがんだり、はい回ったりしないですむような工夫をしてください。
 重い物をもち上げる、つま先で立って腕を伸ばして高いところの物を取ることなどは、下腹に力が入りますからよくありません。ふとんのあげおろしなども避けたい仕事の1つですから、なるべく夫や家族にやってもらうようにしてください。
 妊娠の末期にはからだのバランスがとれなくなりますから、高いところの物を取るのに台の上に乗ったり、からだを乗り出して洗濯物を取り込んだり、荷物をもって走ったりしないようにしてください。階段の上り下りにも注意してください。ことに荷物をたくさん持つと、足もとが見えず不安定になります。妊娠中に階段などから落ちたという人は案外大勢います。

▲ページのTOPへ

 入浴

 妊娠中にはからだの新陳代謝がさかんになります。これは、妊婦の内臓が機能を増加させて胎児の分まで仕事をしているためです。そのために汗をかきやすく、皮膚の分泌物もふえて汚れやすくなります。からだを清潔にするために入浴は毎日したいものです。
 夏ならシャワーでもよいでしょう。あまり熱いお湯に入るよりも、ぬるめのお湯にゆっくり入るほうがよく眠れ、疲れもとれます。
 熱いお湯に入ると流産しやすいというのは迷信です。
 妊娠の末期にはおなかが大きくなるために足もとが不安定になります。タイルの流し場や湯ぶねの中で、すべってころばないように注意してください。すべりどめのマットを敷くとよいでしょう。
 公衆浴場に行く場合にはなるべくお湯の清潔な早いうちに入り、冬の寒いときには湯ざめしないように気をつけます。

▲ページのTOPへ

 衣服

 妊娠中もどんな服装をしてもさしつかえありませんし、最新の流行にあわせて、美しく魅力的な装いを工夫することによって妊娠中の生活を楽しみましょう。
 ただ、妊娠中はからだにさまざまな変化が起こりますから、それを考慮に入れて服装の工夫をします。全体にゆったりとした服装がよいと思います。子宮の圧迫によって血液の流れがわるくなりがちなので、ゴムのきつい下着を使うとますます血液の流れがわるくなり、むくみが出やすくなります。
 妊娠中はおなかを冷やすとわるいという迷信がゆきわたっているために、夏の暑いときでも毛糸の下着をつけている人がありますが、その必要はありません。ただし、冷房のよく効いたところでは、冷えすぎたら下半身をおおうことができるように、ひざかけ、カーディガンなどを1枚余計に用意しておきます。

腹帯
 わが国では妊娠中にさらしの帯をおなかに巻きつける習慣があり、現在でもかなり普及しています。これはわが国独特のものらしく、お隣の韓国にもありません。元来、和服を着ていた時代の習慣なので、洋服ではあまり便利ではありませんし、医学的な根拠はありませんから、しなくてもかまいません。
 また妊娠用のガードルをしている人もありますが、これもぜひ必要というわけでもありません。まして腹帯をしないと胎児がさかごになりやすいとか、胎児が大きくなりすぎるとか、おなかが冷えて流・早産しやすいというのは迷信です。
 靴はかかとのあまり高いもの、あるいは全体が高くなっているものはころびやすいので妊娠の末期にはやめます。ただし、かかとがあまり低くてもかえって疲れるので3cmぐらいのものにします。雨の日にレインシューズやゴム底の靴をはくときにもすべらないように注意してください。

▲ページのTOPへ

 旅行は妊娠の中期に

 妊娠初期に旅行をしたために流産したという話をよく聞きますが、これは根拠のないことです。しかし妊娠の初期に流産が起こりやすいことは確かで、そのような時期に、かかりつけの医師から離れて旅行することは得策ではありません。
 妊娠中期、19〜32週ごろには安定した時期に入りますから、旅行はこの時期が最適です。気晴らしの旅行や避暑、避寒の旅行もかまいません。万一の場合に外国の医師、病院にかかることを覚悟ならば外国旅行もかまわないでしょう。ただし、長時間のドライブや1カ所に1晩泊まりでまた次の目的地に向かうような、ふつうの人でも疲れるような旅行はいけません。旅行先で2〜3日から1週間くらいのんびり滞在できるようなスケジュールの旅行をしてください。荷物などもほかの人に持ってもらうようにし、1人の旅行は避けます。
 乗り物は原則的には電車、飛行機、自動車どれでも同じです。遠いところに行く場合には飛行機のほうがよいのですが、妊娠の末期になると乗せてくれなくなりますから、あらかじめ航空会社に問い合わせておくとよいでしょう。自動車の場合には、ときどきとめて、車から降りて手足を伸ばし血液の循環をよくします。旅程の決まったバスの団体旅行ではその点が思うようにいかないでしょう。

▲ページのTOPへ

 食事の注意

 胎児が受精卵から体重3kgの赤ちゃんに成長する10カ月間は、人間の一生のうちでもっとも発育のさかんな時期であることはいうまでもありません。
 この間には、胎児のからだや胎盤、臍帯だけではなく、お母さんの乳房、子宮の筋肉、血液なども増加しますから、そのための栄養が必要になります。
 一般には、つわりのころには食欲がなくなりますが、妊娠の中期になるとだれでも食欲が非常にさかんになります。この時期に食べたいだけ食べていると、ふとりすぎてしまいます。最近の食品は、どちらかというとカロリーが高すぎるので、妊娠中はいかにたくさんの栄養をとるかではなくて、いかにバランスのよい栄養をとるかを考える必要があります。
 なるべく好ききらいをなくしてなんでも食べるようにします。ご飯、めん類、パンなどの主食はふやす必要がありません。また甘いもの、お菓子、果物もあまりとりすぎないようにします。
 脂質はカロリー源としては効率のよいもので、妊娠中はむしろ脂質に含まれているビタミンをとるために必要です。動物性の脂肪よりは植物性の脂肪のほうが、からだによいのでつとめて植物性の脂肪をとるようにします。胎児のからだの組織や母親の血液、子宮筋、乳腺組織などのもとになるたんぱく質も余計にとる必要があります。
 良質の動物性たんぱく質(脂質分の少ない肉やさかな)、植物性のたんぱく質(豆腐や納豆)を十分にとります。ミネラルやビタミンの補給のためには、牛乳、チーズなどのほかに果物、生野菜などを食べます。貧血を防ぐために鉄分の多い食品(レバー、卵黄、こまつな、ほうれんそう、ひじき、しいたけなど)をとります。
 塩分は妊娠の後半期からなるべく制限し、薄味に慣れるようにします。

▲ページのTOPへ

 嗜好品

アルコール
 ごく少量のアルコールは飲んでもさしつかえないと考えられてきましたが、若い女性の間ではお酒を飲む人がふえています。胎児へのアルコールの害も問題になっていますから、妊娠とわかったらやめるにこしたことはありません。「酔っているときにセックスをして妊娠したが大丈夫か」、「妊娠の初期にそれと気がつかないでお酒を飲んだが、胎児に異常は起こらないか」と心配する問い合わせがあります。その程度では胎児に異常は起こりませんから心配しすぎないようにしましょう。

辛いもの
 食欲を刺激する程度ならかまいませんが、痔のあるかたは食べてはいけません。

コーヒー・紅茶
 飲みすぎなければ特に問題はありません。すべて控えめにするにこしたことはないでしょう。

たばこ
 はっきりと健康に害があることがわかっています。胎児の発育をさまたげるので、体重の少ない子どもが生まれやすくなります。夫がすっていても影響がありますから(受動喫煙)、妊娠を機会に禁煙してもらうべきでしょう。妊娠していないときでも健康に害があり、更年期が早くきます。

▲ページのTOPへ

 運動、スポーツ

 妊娠中の適当な運動は散歩です。これならだれでもできて、全身の筋肉が適度に動き無理もかかりませんから、血液の循環がよくなり、筋肉も丈夫になります。戸外の空気を吸い、日光にあたることも必要です。近くに公園でもあれば最適で、少なくとも1日1回は散歩をするように心掛けてください。
 以前は、妊娠中はなるべく安静にしているのがよい、という説が有力でしたので、古い本を見ると水泳は冷えるからよくないとか、自転車に乗ると流産しやすいとか書いてありましたが、これには根拠はありません。散歩以外の運動やスポーツも、ふだんからしていたものは、妊娠中にも無理のない程度なら続けてもかまいません。
 最近は、妊婦の水泳やマタニティビクスが一種の流行になっていますが、妊娠中に適度な運動をすることによってストレスの解消、腰痛や便秘の予防にも役立ちます。しかし妊婦さんがみんなやらなくてはならないといったものではなく、運動が好きな人がおこなう妊娠中の運動としては適当であろうという程度のことです。ふだんから泳ぐのが好きな人やエアロビクスをおこなっている人にとって、妊娠中に泳ぐことやエアロビクスはよい運動になり、筋肉を鍛えるためそれなりの効果はあります。しかし、一般の妊婦さんにとっては家の周囲の散歩でも十分です。
 お産は一種の肉体労働でおなかの筋肉を力いっぱい使いますから、腹筋などを鍛えておいたほうが、いきみが強くなって楽なことは確かです。

▲ページのTOPへ

 薬ののみかた

 妊娠中に何か薬をのむと必ず胎児に異常が起こるという極端な考えかたが、普及しすぎているようです。現在市販されているかぜ薬、痛みどめ、下剤などで胎児に異常を起こすおそれのある薬はありません。
 妊娠中にのむ薬には大きく分けて2種類あります。1つは栄養を補うためにのむビタミン剤、鉄剤、カルシウム剤で、もう1つは、何か病気や異常のときにのむ薬です。
 ビタミン類は、バランスのとれた食事をしている限りどうしてものまなければいけないというものではありません。とりすぎなければ害はありませんから、1日に1錠くらいを補う目的でのむのはよいでしょう。特に好ききらいがあって生の野菜や果物が食べられない人は必要でしょう。
 貧血のある人には鉄剤はどうしても必要です。医師が処方したら、指示どおりにのんでください。この場合に、多少胃の調子がわるくなったり、便秘をしたり、また便の色が黒くなります。お茶はいっしょに飲まないようにします。貧血のときには鉄剤だけではなく、鉄分の多い食品やたんぱく質を多くとる必要があります。
 妊娠中にカルシウム剤をのむとよいと思っている人はかなりあります。胎児の骨をつくるという考えがわかりやすいためでしょう。
 しかし、カルシウム剤のむずかしい点は吸収がわるいことで、のんでもからだのなかに入るとは限りません。むしろ牛乳、チーズ、ヨーグルトなどの乳製品や小魚からとったほうが吸収されやすいのです。

→薬の正しい知識>薬の作用

▲ページのTOPへ

 妊娠中の医療の受けかた

 ふだんから、何かの持病がある人は妊娠・出産しても大丈夫かをかかりつけの医師によく相談してから、妊娠するのが望ましいと思います。特に心臓や腎臓の病気、膠原病などの持病がある場合には、妊娠するともとの病気がわるくなったり、妊娠中毒症などの合併症が起きやすいので、妊娠しても大丈夫かをよく確かめてからにします。向精神薬やてんかんの発作を抑える薬を内服中の人は、妊娠した場合に薬の量をふやす必要の起こることがあるので、やはりふだんかかりつけの医師に、よく相談します。
 妊娠中にわざわざ予防接種をする必要はありませんが、海外に出張などでやむをえない場合には注意が必要です。大部分の予防接種は副作用はありませんが、生きたウイルスの含まれているポリオの生ワクチンや風疹の予防接種は、妊娠中は受けられません。そのほかの予防接種で外国に入国の際に義務づけられているものは黄熱病(アフリカや南米)ですが、これは妊娠中でも副作用はありません。
 妊娠中に何か病気にかかったり、けがをした場合には医師に妊娠していること、何カ月くらいであるかなどを話してから治療を受けます。
 簡単なかぜや、下痢、食あたり程度ならば、妊娠中に検診を受けている産婦人科の医師に薬を処方してもらったほうがよいでしょう。けがをしたような場合に、もしX線撮影が必要なときにも、妊娠何カ月かをはっきり告げてください。妊娠の中期をすぎていれば、診断目的のX線撮影は胎児に危険はありませんが、子宮が大きくなっていて診断がつけがたいので、どうしても必要な場合以外には、ほかの方法で診断するように医師に頼んだほうがよいでしょう。
 初期で月経が遅れているが、まだ妊娠かどうかはっきりしないが、その可能性のある場合や、ごく初期の場合には、胸部の撮影程度は心配いりませんが、骨盤の撮影はやめたほうがよいでしょう。
 胃や大腸の透視もやらないほうがよいので、内視鏡検査に変えてもらいます。歯の治療は、妊娠中期以後に受けるようにします。痛みがひどくて待てない場合には妊娠していることをはっきり告げてから処置してもらいますが、抜歯などの根本治療はお産がすんでからにします。
 妊娠中に病気になったり、前から異常のある人で薬が必要な場合には、医師の処方と指示のとおりにのまなければなりません。
 サリドマイドの悲劇以来、妊娠初期に薬をのんだことに非常に神経質になっている人が多く、極端な場合には中絶してほしいという人もあります。医師が薬をすすめてものまない人もいますが、ふだんから病気があったり、妊娠中に病気になって、薬が必要な場合に、それをのまなければ、病気がひどくなって自分のからだが弱り、結局は胎児に危険が及ぶ場合も考えられます。
 妊娠中の薬ののみかたとしては、自分で判断して勝手にのんだり、薬局や薬店のすすめるままにのまないこと、必ず医師の診察を受けて医師に処方してもらった薬を指示のとおりにのむことです。
 たとえば、かぜの病原体はウイルスですから根本的な治療薬はありません。せきをとめたり熱を下げたりといった対症療法ですから、妊娠しているときには胎児への影響を考えてあまり薬をのまないほうがよいのです。ただし、あまり高い熱が出た場合には解熱剤を使います。末期にひどいせきが出るときには破水するおそれもあるので、せきどめを処方してもらいます。

▲ページのTOPへ

 乳房の手当て

 妊娠中から乳くびの皮膚を丈夫にしておくと、お乳を飲ませ始めてから乳くびが切れて痛くなるのをある程度防ぐことができます。入浴のあとなどに指先にオリーブ油かクリームをつけて、指先で軽くマッサージをします。毎日続けて乳くびを丈夫にしておきます。
 乳くびが平らな人や引っ込んでいる人はそのままでは赤ちゃんがお乳を飲みにくいので、乳くびを十分に引っ張り出すようにします。乳くびを出すブレスト・シールドという器具もありますから、医師や助産師に相談してみてください。

▲ページのTOPへ

 性生活

 以前に流産や早産をくり返したことのある人や、出血や下腹の痛みがあって現在流産のおそれのある人を除いては、妊娠中の性生活は続けてさしつかえありません。過度の性生活で流産する可能性はありませんが、あまり興奮しすぎて疲れてしまっては困ります。
 妊娠の10カ月目に入ると、腟の粘膜はやわらかくなって傷がつきやすくなります。男性の精液の中にはプロスタグランジンという子宮筋を収縮させるはたらきのあるホルモンが含まれており、また器械的な刺激で破水が起こることもあり、早産を引き起こすおそれがありますから、性生活は避けるべきでしょう。
 妊娠中期以後は子宮が大きくなりますから、正常の体位は無理がかかります。子宮を圧迫しない姿勢を工夫する必要があるでしょう。

▲ページのTOPへ

 働く女性のために

 働いている女性の場合、妊娠したら出産後の生活設計をたてる必要があります。出産後も仕事を続けるのか、これを機会に退職するのか夫婦でよく話し合って決める必要があります。仕事を続ける場合には育児をどうするのか、保育所にあずけるのか、その場所は、費用はどのくらいかなどをよく調べて計画をたてるべきです。最近は妊娠・出産後も仕事を続ける希望が多く、1998年4月から男女雇用機会均等法の改正に伴い、働く女性の母性健康管理がいままで以上に充実しました。事業主は働く女性が妊婦健診に通院する時間を確保することが義務づけられました。また医師の指導により必要な措置が講じられるように「母性健康管理指導事項連絡カード」(母健連絡カード)が作成され、その運用が推進されています。
 職場にいると、家庭の主婦のように自由に休息がとれませんし、仕事による疲れもありますから、夜は早く寝て十分な睡眠をとります。
 また、食事のしたくに十分な時間はとれないかもしれませんが、栄養をおろそかにしないように注意してください。特に朝食は必ずとるように。夕食のときに朝食の分までつくるとか、パン、チーズ、肉製品などを利用して1日3食の栄養を確保します。外食は栄養のバランスがわるくなりますから注意してください。休憩時間には足を高くして休むとか、屋上や外を散歩して気分転換をはかるとともに適当な運動によって血液の循環をよくします。
 職場では妊娠したら早めに上司や同僚に知らせ、時差出勤や職場の配置転換が必要なら申し出て考慮してもらいましょう。夏は冷房が効きすぎる職場もありますから、足もとやひざの下などが冷えないようにひざかけやソックスを用意します。またトイレが近くなりますが、無理にがまんしてはいけません。遠慮せずに行きましょう。極端に湿度や温度の高い職場や、立っている時間の多い仕事、コンピュータやワープロで神経の疲れる仕事などは妊娠した場合には換えてもらうことができます。
 産休は産前6週間と産後8週間ずつ、休暇は必ずとります(ふたご、みつごなど多胎妊娠は産前14週間。双胎での平均分娩週数は約36週であるので、その10週間前、すなわち分娩予定日の14週前からの産前休暇に変更になりました)。産前もあまり予定日近くまで働いていると早産することがあります。
 産休をとったら十分に休息し、出産の準備をととのえるとともに、産後に備えて身のまわりを片づけておきましょう。夫も育児休暇がとれるようになりました。

▲ページのTOPへ

 母親学級

 大きな病院、産院、保健所、母子健康センターなどでは母親学級を開催しています。自分がお産をする施設の母親学級を受講できれば、いちばんよいと思いますが、都合がわるかったり、やっていなければ住まいの近くの保健所に問い合わせてみてください。
 母親学級の目的は、妊娠、出産の経過、異常の見分けかたなどに関する正しい知識を身につけて、お産に対する不安をなくし、お産と育児についての心構えをつくることにあります。夫立ち会い分娩を扱っている施設では、夫にもいっしょに受講してもらって、出産の知識や、補助動作の方法をあらかじめ勉強し、練習してもらいます。これが両親学級で、実施している施設もしだいにふえてきました。
 内容は施設によって多少違いますが、妊娠中の日常生活の注意、栄養や食事のとりかた、お産のために用意するもの、お産の経過、分娩のときにどのようにリラックスしたり、いきめばよいか(一般に補助動作と呼ぶ)、赤ちゃんの取り扱いかたや入浴のさせかた、授乳の方法やお乳の足りないときの人工栄養の調乳法、産後の受胎調節法などで、助産師や医師、施設によっては栄養士もわかりやすく説明してくれます。
 時間は1回2時間ぐらいで、週に1回、4回で1コースのところが多いようです。施設によっては補助動作を実際に練習させてくれるところもあります。ほかの妊婦さんともお友だちになれますし、大きな病院の外来は混雑して、ゆっくり質問したり指導を受けられませんが、母親学級を利用すれば質問の機会もありますし、納得のいく説明も受けられます。

▲ページのTOPへ

inserted by FC2 system