家族計画の基本は「すべての子どもは夫婦が望んだ子どもであってほしい」というものです。女性の健康を守るために、子どもを産む時期、数はその夫婦の状態によって変わってくるものです。生物学的には性成熟期である25歳前後の出産が母児ともにもっとも安産であるといわれています。しかし、現在の社会情勢では生物学的条件によってのみ出産の時期を決めることはできません。また最近の周産期医療の進歩は、出産の時期の高齢化というリスクを十分に補い、安全に出産ができるようになっています。
出産の時期や子どもの数は、最終的には夫婦の人生観、経済状態、健康状態、年齢、職業などによって決められます。その過程において望まれない妊娠、そして人工妊娠中絶が安易におこなわれるようであってはなりません。そのためには家族計画をしっかり立て、受胎調節の知識も十分に備えていることが必要となります。
いっぽう、妊娠をしたくても妊娠できない不妊症のカップルも多いのですが、最近の不妊治療のいちじるしい進歩によって多くのカップルがその恩恵を受けています。しかしその半面で、3胎、4胎、5胎などのスーパー多胎が増加しています。この現象に対しては子宮内にいる胎児の数を減少させる減数手術が実際にはおこなわれていることがあります。これらの現象は家族計画にあらたな問題を提起しており、今後解決すべき問題であろうと思われます。
また、結婚生活という形態は拒否しても子どもを産み育てたいという女性が欧米諸国では増加しつつあります。いわゆるシングルマザーです。日本ではまだまれな形態ではありますが、今後注目すべき事象の1つと思われます。
人類が生存するためには女性が平均2人以上の子どもを産み育てていく必要があるといわれています。そして精神的にも肉体的にも健康な子どもの発育には母性と父性の両方が必要であり、そのどちらが欠けても成熟した子育てはできません。高齢社会の進行、労働力不足など少子化によって多くの社会問題が起こっていますが、このような社会的要求に左右されることなく、本来の母性と父性の自然な要求に従って、夫婦で子どもを産み育てる希望が強くなることが健全なありかたでしょう。
社会全体として女性が安心して子どもを産み育てる環境の整備が急務と考えられます。
産み始め
結婚して、いつ子どもを産み始めるか、については、結婚の時期と同じように、人によって違いますから、一律にこうでなければいけないとはいえません。
特に最近、女性の結婚年齢が上昇し、30代での結婚がふえています。したがって、30代以後にはじめてお産をする女性が多くなりました。しかし医学的な一般論としては、20代にはじめて出産をするのが、いちばん妊娠やお産の経過が順調に進む確率が高いといわれています。
また35歳以上になってはじめて出産する場合を高年初産といって区別しますが、これは女性が年をとるにつれて、生活習慣病などの合併症を起こしやすくなるとともに、スタミナや体力がなくなって、お産のときに頑張りが利かなくなるためです。
しかし体力などには個人差がありますから、35歳をすぎたからといって「もう年だから産めない」などと決めてしまうことはよくありません。
ただし何事にもチャンスというものがあります。結婚して、特に支障もないのに、「2人きりのほうが自由で身軽だし、好きなことができる」というだけの理由で子どもを産まない人がいます。こういう人はうっかりして、時機を失うおそれがあります。
子どもを産む間隔
女性のからだが妊娠・出産の疲労から完全に回復し、精神的、身体的にゆとりを取り戻すためには約1年かかります。また生後1年間、赤ちゃんの育児に相当な手間がかかります。したがって産後1年たって妊娠すると、次の出産は約2年後ということになるでしょう。妊娠・出産に影響するような病気にかかっていたり、前の出産が異常であったために、疲労や衰弱のひどかった人は、もうすこし間隔をあけたほうがよいでしょう。
ただし子どもの年齢があまり離れるのも考えものです。5歳以上間隔が離れると、いっしょに遊ぶことができず、ひとりっ子が2人いるような状態になります。
年齢と家族計画
男性の年齢はあまり影響がありません。ただしあまり年をとってから子どもができた場合には、その子が成人する前に定年退職することになって収入に変化が起こるなど経済的な問題はあるでしょう。女性は年齢が進むほど、子宮筋腫などのために不妊になったり、流産を起こしやすくなったり、あるいは子どもが先天異常になる確率が高くなるなど、妊娠・出産にとって不利になります。したがって健康状態さえ許せば、あまり間隔をあけずに次の子どもを産んだほうがよい場合もあります。
女性は45歳ぐらいまで子どもを産むことが可能ですが、医学的にはできれば35歳前に欲しいだけの子どもを産み終わってしまうほうが、女性にとっても、生まれる子どもの健康に関してもよいと考えられます。