傷に感染が起こらず異物もなければ、期間が長くなっても傷に肉芽組織が充満し、その上に皮膚が出てきて傷は自然に治ります。次に傷の治りかたを示します。



一次治癒
　鋭い刃物や手術などで切った傷は縫合すると、化膿しない限り細い１本の線の傷が残りますが、治癒までの期間が短く美しく治ります。線となって傷が治るのが理想的で、これを「一次治癒」（一次癒合）といいます。

二次治癒
　縫合しなかったり、傷が感染していたり、木や砂などの異物が入っていると縫合できませんので、感染を抑えながら自然に治るのを待ちます。しかしこのようにして治った傷は幅広くなり、少しへこんでいて、まわりの皮膚と色が違って目立ち醜くなり、治る期間も縫合したときに比べて長くなります。このような、縫合しないで治すことを「二次治癒」（二次癒合）といいます。

三次治癒
　二次治癒の途中で感染していないことや異物がないことがわかった時点で、傷のまわりを切り縫合することがあります。これを三次縫合ということがあります。傷が閉鎖されたあとに醜い傷が残った場合、きれいにするために形成外科医が手術することも三次縫合で、その結果治ることを「三次治癒」（三次癒合）といいます。
　肉芽が傷の底から盛り上がってくる前に、皮膚の上、表面で皮膚がつながり傷が閉鎖することがあります。この場合は皮膚の下にすき間（死腔といいます）ができ、うみがたまる原因となります。表面が治ったからといって安心してはいけません。


　傷を縫合するかどうかは医師が判断し、縫合した場合としない場合の経過や結果を示し、患者またはその家族、付き添いに治療法を選択してもらいます。最近は必ずこのようにして承諾を得てからおこなうこと（インフォームド・コンセント）を医師は原則としています。縫合することの利点は、以下のようなことです。

１．感染の危険性が少なくなる
　傷を閉鎖するので外からの細菌が入りにくくなります。最近は手術後数日で縫合した糸をつけたまま、シャワーを浴びることを許可している病院もあります。

２．治ったあとの傷がきれいになる
　一次治癒で治った傷は１本線となります。

３．治療期間が短くなる
　肉芽で埋める部分が少なくなり、治癒が早くなります。

４．治療中の傷の管理が容易になる
　開放性創では痛みが続き、ほぼ毎日の消毒が必要ですが、縫合することで消毒回数が少なくなります。
　このような理由で医師は可能な限り縫合するようにしています。



　傷があっても感染する可能性がある場合は縫合しないこともあります。縫合すると、皮下に膿瘍ができた場合、わかりにくくなるからです。
　また縫合しなければ、もし膿瘍がたまっても外に流れ出るからです。一般的には、以下のような傷は縫合しません。

１．傷ついてから６〜８時間以上たった傷
　傷が開いていることは常に感染していると考えられます。特に６〜８時間（ゴールデン・タイムといいます）すぎた傷は感染していると考え、一般には縫合しません。

２．動物にかまれた傷（咬傷）
　動物の口の中は細菌が多くいると考え、またかまれた傷は深く中まで傷ついていると考えられ、感染があとで起こる可能性があります。

３．感染している傷、感染しそうな傷、異物が入っている傷
　十分に洗浄しても感染が起こりそうな傷や異物をとっても小さな砂や石が残っている可能性がある傷です。

４．その他、貫通した傷
　通った傷の中のほうで感染する可能性があるからです。
　以上の傷では、多くの場合縫合しませんが、十分に洗浄して感染しないと判断した場合や、大きな傷のときには洗浄して、間隔をあけて縫合することもあります。その後、三次治癒をおこなうことになります。


　抜糸は通常、７〜１０日でおこないます。顔では３〜５日後と早く、関節などの動きのあるところや糸に緊張がかかっているところでは１４日後ころとおそくおこないます。