ツイート

HOME>高齢者と病気>高齢者の病気>高血圧

高血圧[こうけつあつ]

 高齢者の血圧は、よく年齢に100を足した血圧が正常だといわれます。正確にいうと、それはけっして“正常”ではないのですが、まあ満足すべき値と考えていいでしょう。理想的には高齢者といえども、若い人と同じように130〜139/85〜89mmHg以下にしておくほうがいいのですが、それ以上であっても、最終的な結果には若い人ほど大きな差はありません。
 また、最小血圧は、70〜90mmHgとけっして高くないのに、最大血圧のみが190〜220mmHgと高血圧であるという人も高齢者には多いものです。こういうのを“収縮期高血圧”と呼んでいます。収縮期高血圧は、大動脈硬化などの加齢現象が原因であることが多く、薬による治療効果も、最小血圧も高血圧である場合に比べて、変わらないことがわかっています。

→血圧・血管のおもな病気>高血圧症

▲ページのTOPへ

 血圧の変動

 高齢者の高血圧の特徴は、血圧が非常に変動しやすいということです。そのため、何回も血圧測定をくり返さないとその人の真の血圧の値はわかりません。したがって、1回だけ高血圧というだけでは、実際にはそれほど血圧が高くない場合も多くあり、日を変えて最低3回は血圧測定をおこなって、治療のしかたを決めるのがよいのです。その間血圧を放置しておいても通常は心配ありません。またそれ以外に、座位だけではなく立位で血圧を測定しておくことも重要です。高齢者に多い起立性低血圧を調べるためです。

▲ページのTOPへ

 無症状の臓器障害

 高齢者の高血圧のもう1つの特徴は、一見症状がなくても、脳や心臓の障害が相当進んでいることが多いということです。無症候性心筋虚血とか無症候性脳梗塞ということばは、このような状態のことを指します。したがって、高血圧を放置しておくと、障害がどんどん進んでしまう危険があり、治療が必要です。同時に、あまり急激に血圧を低下させすぎると、このような人では臓器への血流が減少しすぎて、かえって状態を悪化させることにもなりかねません。すなわち、高齢者の高血圧は、じっくりと徐々に血圧を下げていくのがいちばんです。
 無症状だが、冠動脈硬化症や脳動脈硬化症が相当進んでいるかもしれないとしたら、どのような方法でそれを見つけだすことができるのでしょうか。冠動脈硬化症の場合は、運動負荷をおこなって心電図を検査したり、シンチグラフィといった心臓の血流分布を検査する方法を用います。脳動脈硬化の場合は、心臓に比べていい方法がありません。CTやMRIといった検査である程度推定することが可能です。

▲ページのTOPへ

 合併症

 高齢者の高血圧は、しばしばほかの合併症を伴います。高血圧性の心・脳・腎疾患以外にも、糖尿病、高コレステロール血症、高中性脂肪血症、肺気腫、慢性気管支炎などの閉塞性肺疾患などを、たいへん高率に合併します。そのため、抗高血圧薬の選択に注意を要します。抗高血圧薬の種類によっては、これらの合併症を増悪させることが懸念されるからです。

▲ページのTOPへ

 治療

 減塩、禁煙、肥満の是正、適度の運動など、高齢者になっても守らなければなりません。これらの非薬物的な一般療法は、血圧を軽度ながら下げる効果以外に、血液中の脂肪や耐糖能を正常化し、精神機能を含めたほかの身体機能を活発にする点で、総合的なよい影響をもたらすのですから、薬以上のものがあるのです。
 薬物療法にあたっては、高齢者の高血圧は、徐々に血圧を正常化すること、場合によっては、特にすでに動脈硬化症が発症している場合などは、すこし高めに血圧の目標値を設定する、たとえば、160〜170くらいでもよしとする、などの配慮が必要です。そのために、薬剤は半錠とか少量ずつ投与します。最近はカルシウム拮抗薬という抗高血圧薬が使用されます。この薬は、効き目が強い半面、効きすぎて血圧が下がりすぎ、ふらつきとか動悸の副作用がよく出現します。このような症状があらわれれば、必ず医師に報告することを忘れないでください。カルシウム拮抗薬以外にアンギオテンシン変換酵素阻害薬(ACE阻害薬)やアンギオテンシン受容体拮抗薬もよく用いられるようになりました。このような新しい抗高血圧薬以外に、利尿薬や β 遮断薬[べーたしゃだんやく]などの従来からの薬も有効であることが確かめられています。ただし、これらの抗高血圧薬や α 遮断薬[あるふぁしゃだんやく]などでも、高齢者では、しばしば副作用が出現しやすいので、定期的に医師にチェックしてもらわなければなりません。

▲ページのTOPへ


inserted by FC2 system