腹痛の原因にはいろいろあり、そのなかでどのような腹痛が婦人科の病気で起きるのか、その見立ては必ずしも容易ではありません。しかし婦人科に関係する病気で、緊急の手術が必要な病気の代表的なものは、子宮外妊娠の破裂と卵巣嚢腫
[らんそうのうしゅ]の軸捻転
[じくねんてん]です(産科の病気はまた別にあります)。婦人科以外の腹痛を伴う病気を見分けるための、手がかりについてごく簡単に説明しましょう。
腹痛に発熱が伴う病気としては、虫垂炎
[ちゅうすいえん]、胆嚢炎
[たんのうえん]、潰瘍穿孔
[かいようせんこう]、急性膵炎
[きゅうせいすいえん]、腹膜炎があります。
排便がないものとしては腸閉塞
[ちょうへいそく]を考えなければなりません。
また痛みの性質からみますと、急激に起こってしだいに痛みが強くなるものとしては、胃や十二指腸の穿孔
[せんこう]とか、脾臓
[ひぞう]の破裂があります。非常に激しい間歇痛
[かんけつつう]は腸閉塞を、また、急激で持続的な激痛は胆石症
[たんせきしょう]、胆嚢炎、急性膵炎によくみられます。
胃炎の痛みは、発症は急激でも持続が短いのがふつうです。チクチクした持続性の痛みは虫垂炎の特徴ですし、食事との関係では、胃潰瘍では食べた直後に、また十二指腸潰瘍では空腹時に痛むことが多いといわれています。
腹痛のほかにどのような症状があるかも病気のめやすをつける参考になります。
吐き気がしたり吐いたりするのは、胃炎、虫垂炎、卵巣嚢腫の軸捻転にみられる症状ですし、下血
[げけつ]は腸間膜動脈閉塞
[ちょうかんまくどうみゃくへいそく]や胃がんに、便秘は腸閉塞、S状結腸軸捻転、虫垂炎によくみられます。黄疸
[おうだん]は胆石症、胆嚢炎などの肝臓疾患によく合併します。
子宮外妊娠と卵巣嚢腫の軸捻転以外はすべて男性と同じです。しかし医師の立場からは常に妊娠との関連を留意する必要が強調されています。妊娠の診断が確定していなくても、すこし月経が遅れているとか、ムカムカして乳房がはり、なにか妊娠を疑わせる症状があるとか、出血が続いているときは、子宮外妊娠を考える必要があります。若い医師に対して「女性を診たら妊娠を疑え」という警句があるくらいです。ついうっかり、いま自分が扱っている異常が、妊娠が原因で起きたものであったり、それに関連する異常であることに気がつかないで誤診することをいましめたことばです。そしてその場合の代表的なものが、子宮外妊娠というわけです。
最近は超音波診断などで、妊娠が中絶して下腹痛などの症状が出現する前に、子宮外妊娠の診断がつけられることもよくあります。むかしと違って、本人には子宮外妊娠中絶などの自覚症状がまったくないのに、超音波診断により、子宮外妊娠の診断がつくこともあるようになりました。したがって、妊娠の疑いがあるならすぐ医師の診断を受けることが必要です。
そのほかに妊娠と関係のない婦人科の病気で緊急の開腹手術が必要なものとして、卵巣嚢腫の軸捻転と卵巣出血があります。
ほかにも、急性付属器炎とか卵巣溜膿腫
[らんそうりゅうのうしゅ]とか卵巣膿瘍破裂
[らんそうのうようはれつ]とか、クラミジアによる病気もありますが、だいたい婦人科関係の腹痛は下腹痛で、虫垂炎や泌尿器疾患との鑑別が問題になります。
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