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にんじんは強壮、冷え症を治す食べものとして、中国では大変有名です。 中国の昔の薬物書や医学書にも書かれていますが、にんじんには五臓六腑(ごぞうろっぷ)をあたため、血を補う作用、胃をじょうぶにし、食欲を増進させる作用があります。そのため体力がなく、冷えやすいといったタイプの人には特に効果があります。
古くからすすめられているのがにんじんのつき汁です。にんじんをよくついて、汁をとり、それにハチミツを加えるだけの簡単な飲みものです。これは冷えを伴うのぼせにも効果があります。また、すりおろしたにんじん大さじ1杯をあたたかいごはんにのせ、しょうゆをたらして、1日1回食べてもよいでしょう。
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ごまはビタミンEを非常に多く含んでいます。ビタミンEには末梢血行障害を改善する、中性脂肪を除去する、高血圧症や心臓病を予防するなどのはたらきがあるほか、冷え症の治療に大変効果があります。 またごまには、虚弱体質を改善するはたらきもあるので、やせて体力がない冷え症の人には最適です。ごまハチミツを1日2回食べるとよいでしょう。
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羊肉は、気力を増し、血をふやし、弱った体をじょうぶにするはたらきがあります。また体をあたためる作用にすぐれているので、冷え症に大変効果があります。また羊肉はやわらかくて消化がよいうえに、脂肪分が少ないので肥満が気になる現代人には最適です。
羊肉ともち米のお粥がおすすめです。もち米も寒さによる腹痛や下痢、そして冷え症に大変効果があります。
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赤とうがらしは、消化器系をあたためて、食欲を増進させる効果にすぐれているので、ふだんから料理にとり入れるようにします。また、赤とうがらし酒を就寝前に飲むと体がよくあたたまります。ただし、痔や目の充血している人は飲んではいけません。足先が冷えるという人は、とうがらし1本をガーゼにくるんで靴や靴下の中に入れてみてください。足先がポカポカしてきます。
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冷え症にぴったりクコ粥
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クコはナス科の落葉小低木で、根、茎、葉、果実、種子のすべてに薬用効果があり、古くから漢方に用いられています。 クコには血管の壁をじょうぶにして動脈硬化を防ぐビタミンC、そして血行をよくするベタインなどの成分がたっぷり含まれています。そのうえ不老長寿の薬草ともいわれているくらい強壮効果にすぐれているので、冷え症の治療にはぴったりです。
簡単に作れるクコ粥を食べましょう(お粥の作り方の項も参照)。またクコの干した葉7〜20gを煎じて、お茶がわりに飲んでもよいでしょう。
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ウコギは強壮・強精効果にすぐれており、つらい冷え症を治してくれるはたらきがあります。 薬効のあるのは根で、これを干したものは五加皮(ごかひ)という生薬名で市販されています。これを1日15gを煎じて服用します。 また煎じ汁としてだけでなく、炊きこみごはんにしてもよいでしょう。春先のウコギの若葉100gをきざんで、塩もみをしてからカップ3の米と炊きこみます。またはウコギの葉を蒸し、もんで細かくきざんだものをふりかけにしてもよいでしょう。
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タンポポは薬草としての効果が高いため、古くから漢方薬に用いられています。消化不良、胃炎、胃痛などによく効くことから、おもに健胃薬として使われていますが、タンポポの成分にはすぐれた強壮作用もあり、冷え症の治療にも大変効果があります。
薬効は葉、茎、根の部分にあり、乾燥品は蒲公英(ほこうえい)とよばれる生薬です。乾燥タンポポで作ったタンポポエキスがおすすめです。なおタンポポは、どの品種も薬効に差はありません。
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冷え症は男性にはほとんどみられず、女性特有の症状といえます。特に思春期や更年期の女性に多くおこります。手足が冷たい、腰に氷をあてられているような感じがするなど、人によって症状はさまざまですが、頭痛、腰痛、肩こり、イライラ、のぼせ、めまい、どうきなどの症状を伴うことが多いようです。
これらの症状は、おもに血液の流れを調節する自律神経(じりつしんけい)のはたらきが鈍って、血管の少ない手足や腰の血液の循環がわるくなることからおこるとされています。また性ホルモンのバランス異常、新陳代謝機能の衰えなどが原因のこともあります。そのほか中高年では、動脈硬化症による手足の冷えがあるので要注意です。 冷え症は体質的なものがほとんどで、冷え症そのものが死に至るということはまず考えられません。しかし神経痛や膀胱炎(ぼうこうえん)などを誘発しやすいほか、不妊症や流産の原因にもなりやすいのです。 冷え症を治すには、日ごろから、自律神経のはたらきをよくして、血液循環や新陳代謝を活発にするような生活を心がけ、体質を改善する努力が必要です。
まず積極的に体を動かすこと。これで全身の血行がよくなります。食事は、たんぱく質、ビタミン、鉄などが豊富に含まれた、エネルギーの多い食品をとるようにします。たんぱく質は体の保温に欠かせません。ビタミン類では、特にB・C・Eをたくさんとるようにしてください。ビタミンEは血行をよくし、ビタミンBとCは末梢神経(まっしょうしんけい)のはたらきを強めます。EとBは小麦胚芽、緑黄色野菜、豆類など、Cはピーマン、ブロッコリー、小松菜、カリフラワーなどに多く含まれています。またほうれん草、レバー、ごま、貝類などの鉄は造血を助けます。
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● 血のめぐりがよくなれば頭もよくなる?
脳に必要なブドウ糖と酸素は血液が運搬。この運搬がよければ脳も当然パワーアップ。
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冷え症の人が気をつけなければならない食べものは、生野菜とくだものです。これらは体を冷やすので多食は禁物です。 なかでも特に避けたいのは、トマト、きゅうり、とうがん、みつば、タケノコ、ふき、柿、なし、すいか、バナナ、キウイフルーツ、レモンなどです。これらは生で食べると体を冷やすので要注意です。熱を加えて調理するのであればかまいません。 ほかに体を冷やす野菜は、なすです。煮て食べることが多いので問題ありません。ただし、つけものに要注意です。 こんにゃくも生の刺身こんにゃくは避けましょう。 冷え症の人は、なるべくあたたかい食事をとるのがよく、夏でも冷やしたくだものや清涼飲料水、寒天類といった冷たいものは極力避けましょう。 また、エネルギー不足が原因で冷えることもありますので、少食の人は気をつけてください。
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冷え症を改善するには、衣類の調節を上手に行なうことです。服装は、下半身をあたためるものを身につけてください。特に夏場クーラーがある場所では、下着を1枚多くつける、靴下をはく、ひざ掛けをするなどして体温を逃がさないようにします。 ただし、むやみに厚着をするのは禁物です。体の動きを鈍らせ、運動不足の原因になります。ですから、寒気に慣れるようにしましょう。寒くなってから突然うす着にするとかぜをひいてしまいますから、あたたかいときからうす着にするよう心がけましょう。 腰の冷えのひどい人は、ヨモギの葉を乾燥させたものをつめた座布団を作って、これにすわると効果的です。 1日中立ち仕事をしている人などは、ときどき青竹踏みや敷居などで足踏みをするとよいでしょう。下半身の血行がよくなります。また血液の循環をよくするには、乾布摩擦やマッサージが大変効果的です。皮膚を刺激することによって血行がよくなり、乱れた自律神経(じりつしんけい)のはたらきを安定させます。
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冷えが強いときには、血液の循環をよくするにらを食べるとよいでしょう。きざんだにらをすり鉢でつき、ガーゼでしぼって汁をとります。しぼり汁さかずき1杯分をお湯で割り、1日3回飲むと体があたたまります。また、きざんだにらをお粥に入れても効果的です。ただし、下痢をしやすい人は多食しないように。 トウキがよく効きます。お湯に通してから日干しにしたトウキの根10gを700mlの水で半量になるまで煎じ、1日3回に分けてあたためて服用します。
サフランは、陰干しにした雌しべ5〜6本を1日量として、茶碗半分ほどの熱湯に浸して飲みます。これにブランデーを少量加えるとより効果的です。
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●血液の循環がよくなる
冷え症のときには、十分な栄養、適度な運動のほかに、保温にも気を配りたいものです。あたためることによって、冷えのおもな原因である血液の循環をよくするからです。 この保温に大変効果的なのがお風呂です。冷え症の人は、毎日入浴するとよいでしょう。特に夜、手足が冷えて眠れないというような人は、毎日寝る前に入ることをおすすめします。末梢(まっしょう)の血管の血液循環がよくなって、手足があたたまるうえに、精神もリラックスさせます。
熱いお湯に入るより、38〜40度のややぬるめのお風呂にゆっくりつかっているほうが、ジワジワとよくあたたまることができます。
●お湯と水に交互につかるとよい
また冷え症に効果的な入浴法として、温冷交代浴があります。これは、体を洗ってから40度くらいのお湯に5分ほどつかる、次に水に3分くらいつかる、これを4〜5回繰り返してから、最後に温浴するといった方法です。
お湯と水に交互につかることを繰り返すことによって、冷えの原因と考えられる自律神経(じりつしんけい)の調節機能に刺激をあたえて、回復させることができるのです。冷水につかることがむずかしい場合は、シャワーでもかまいません。シャワーでお湯を3分かけ、次に水を10秒かける。これを5回繰り返します。このときは最後に水で終わるようにします。
手足が冷えるという人は、ふつうに入浴し、お風呂から上がるときに冷える部分にだけお湯と水を交互にかけ、刺激をあたえるといったやり方でもよいでしょう。
腰が冷えるという人は、腰のかわりに足にかけます。足の場合は、シャワーのほかにお湯と水の入った洗面器に交互に足を浸すやり方もあります。ただしこの温冷交代浴は心臓に負担がかかるので、心臓障害、肥満、または高血圧や動脈硬化などの症状がある人は避けてください。
●薬草風呂がおすすめ
また冷え症には、このような入浴法にあわせて、薬草風呂を併用するとより効果的です。薬草風呂は、植物に含まれている精油成分が皮膚に作用し、血行をよくして体をあたためるうえに、そのあたたかさを保つはたらきがあります。
特に冷え症によいといわれているのが、だいこんの干葉湯(ひばゆ)です。だいこんの葉の干したもの3株くらいを水のうちからお風呂に入れて沸かします。足腰の冷えによく効きます。
そしてヨモギ湯。ヨモギの葉に含まれている精油成分には芳香があるうえに温熱効果があるので、体があたたまり、湯冷めをしません。ヨモギの乾燥した葉300g、または太い茎をきざんで乾燥させたもの200gを木綿袋に入れ、水のうちからお風呂に入れて沸かします。入浴中にこの袋で体をこすると、腰痛や腹痛にも効きます。 端午の節句に入るショウブ湯も冷えに効果があります。ショウブ湯の芳香のもとである精油成分がお湯に溶けこみ、皮膚を刺激して血行をよくします。適当な長さに切ったショウブの茎を束にして縛り、お風呂に入れます。 また、塩を40度くらいのお湯に入れるだけでも薬湯になります。いわゆる塩湯ですが、10分程度つかるだけで汗が流れるほどあたたまります。寝る前に入れば、布団に入ったあとでも体がホカホカしてくるので、手足が冷たくて眠れないような人には最適です。 そのほかにもアカマツの葉や、みかんの皮を日干しにしたもの(生薬で陳皮<ちんぴ>という)、すりおろしたにんにく、ユズの皮の煎じ汁を入れても薬湯になります。
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●入浴するとシワができるのは?
皮膚表面の角質層の細胞は死んでいるため、長くお湯につかるとふやけて膨張してしまう。
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お粥は老人や胃の弱い人をはじめ、ダイエットにもおすすめ。
ここでは、基本的な作り方とコツを紹介しましょう。
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まず米を洗います。洗う際、手早く水を捨てないとぬか臭くなるので注意します。
洗ったあとは、ざるに上げ、1時間ほどおいて、しっかり水けをきることも大切です。
お粥を作るためのなべは土なべ、それも行平(ゆきひら)土なべが理想的です。
熱がやんわり回るため、長時間弱火で炊くお粥に最適です。ない場合は厚手なべでもかまいません。
炊き方も大事です。なべに米と水を入れ、火にかけて沸騰したら弱火にし、あとは吹きこぼれないように数回に分けて差し水をしながら、ゆっくりコトコト炊きます。途中でかきまぜると、粘りが出て、のりのようになってまずくなるので、十分気をつけます。
体調が思わしくないときは、薬粥にするとよいでしょう。お粥を前述のように炊いたあとで、症状に効く材料をすばやく入れて2〜3度煮立たせます。こうして薬効エキスがしみ出るのを待ってから食べます。
忙しい人や、1回ごとにわざわざ作るのが面倒な人は、多めに作り、1回分ずつ冷凍しておき、食べるときに解凍するとよいでしょう。
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●薬粥にあうおもな材料と薬効
材料 |
薬効 |
あずき |
リウマチ |
クコ |
冷え症 |
ごぼう |
脳卒中 |
サネブトナツメ |
更年期障害 |
ハトムギ |
糖尿病 |
やまいも |
スタミナ不足 |
緑豆 |
夏バテ |
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